海外進出の登竜門-シント・トロイデンVVというロールモデルと日本企業による海外クラブ買収

近年、5大リーグの1部クラブに直接移籍よりも、2部クラブやポルトガルリーグやベルギーリーグ、ロシアリーグといったリーグの1部クラブへの移籍が増加している。

その中でもひと際日本人選手が多く所属しているクラブがベルギー1部のシント・トロイデンです。

以下の7選手が2021年9月10日現在トップチームに所属しており、約1/4が日本人ということになります。

GK:シュミット・ダニエル

DF:松原后、橋岡大樹

MF:伊藤達哉

FW:鈴木優磨、林大地、原大智

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〇日本人選手が増えたきっかけ

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2017年11月に、DMMはシントトロイデンの経営権獲得を機に、同社の日本人選手の海外リーグへの架け橋を作るという方針のもと、クラブ運営が進められました。

DMMの広報は、サッカーダイジェストのインタビューで、「外国人枠の制限が実質なく、25歳以下の選手獲得に対する税金還付がある、いわゆる“ステップアップリーグ”のクラブが条件でした。地理的にスカウトが来やすく、外国資本に対する障壁も低いという理由からベルギー、ポルトガルとオーストリアのクラブに候補が絞られました」と回答しました。(https://www.soccerdigestweb.com/news/detail2/id=85723)

実際に、過去在籍していた冨安選手はボローニャ(セリエA)へ、遠藤選手はシュトゥットガルト(ブンデス1部)へのステップアップを果たしました。

フランクフルトからシントトロイデンにローン移籍した鎌田選手も、シントトロイデンで自信を深め、フランクフルトもプレーを高く評価しローンバックしました。

ベルギーリーグは、リーグランクも世界10位とJリーグと比べ高く、フィジカル面で高いレベルが求められます。(日本は2021年8月現在、30位-https://www.kickalgor.com/football-leagues/the-ka-football-leagues-global-rating-for-2021-22-season/)

ステップアップを目指す欧州の若手とともに闘える環境、CL出場チームと対戦できるハイレベルな環境で、各国のスカウトマンは目を光らせています。

Jリーグから直接5大リーグへ移籍するよりも、現実的な方法でステップアップできることが、シントトロイデン移籍の魅力だと思います。

その結果が林選手や原選手ら代表級の選手の移籍に表れていると思います。

〇欧州5大リーグの外国人枠と欧州クラブの日本企業による買収

欧州5大リーグでは、スペイン、フランスは登録が3人までと外国人枠が少ない点、イングランドは労働許可取得が難しい点が日本人選手活躍の上で障害になります。

この中で、フランスはアフリカ国籍の選手に制限がない点が特徴的です。

ドイツは事実上資産家によるチームの買収が出来ないシステムであり、イタリアは獲得枠に3人までと制限があります。

イタリアの場合、イタリアのリーグ内での移籍の場合、国内選手として扱われることが魅力的ですが、セリエBや3部は外国人の獲得が出来ない点が残念です。

そんな中、ポルトガルリーグは欧州5大リーグと比較すると外国人登録枠が6名と多いため、これに目を付けた 株式会社ナッツアンドアバウト が2019年12月にポルトガルリーグ2部の UDオリヴェイレンセ を買収し、実際に小野原和哉、小枇ランディエメカの2名が選手登録されています。

更に2020年10月には Football Innovation Japan株式会社(社長は元川崎フロンターレの中村彰さん)がポルトガル3部のAnadiaFCを買収し、今夏日本で選手トライアウトを行いました。現在は元日本代表DF加藤恒平選手やトライアウトに合格した清水龍秀選手がAnadiaFCに所属しています。

日本は2重国籍を持つことが難しくEU圏外国のため、欧州クラブへの移籍はハードルが多いですが、欧州の1流のノウハウ・技術を身に着けるため、選手・監督・フロントスタッフには挑戦して欲しいと思います。

〇日本企業による海外クラブ買収の例

では、DMM同様に欧州クラブを買収して経営する日本企業は他にないか調べたところ、以下のような例がありました。

いずれも現在は撤退していますが、それぞれ日本人選手や監督、フロントスタッフの育成を目指していたことと思います。

株式会社インデックスグルノーブルフット38 (フランス2部) ⇒現在撤退

・株式会社イープラスユー⇒CEサバデルFC(スペイン2部)⇒現在撤退

・本田圭佑(HONDA ESTILO)⇒SV HORN(オーストリア3部)⇒現在撤退

〇総括

シントトロイデンの、日本人選手急増のきっかけは日本企業DMM.comによる経営権獲得がきっかけでした。

各企業の経営権獲得のターゲット選定に、外国人枠が大きく関係しており、現在はベルギーリーグ(世界10位)、ポルトガルリーグ(世界7位)が日本企業の資産家に注目されています。

欧州5大リーグの1部クラブの経営権獲得は相当な資金力が必要になりそうですが、2部であれば例えばスペイン2部のCEサバデルFCを買収した際、250万ユーロでした。(約3.25億円)

1級のクラブは1級の育成組織を持っています、今後そのようなクラブを日本企業が買収することがあるのか、またシントトロイデンや他の海外クラブ経営に参画する日本企業がこのビジネスを成功させるのか今後も注視していきます。

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